海勉 Studies of the ocean

国民共有の財産である海洋水産資源の管理は国民に開かれた政策の下で科学的に行われなければならない

食料安全保障 Food security を自学してみた

学術論文をもとに食料安全保障(food security)について学んでみます。特に水産物の話題を対象とします。 2010年に発表されたGarcia and Rosenberg (2010), Food security and marine capture fisheries: characteristics, trends, drivers and future pers…

放流についての論文、レポート。記2024年1月28日

Terui et al. (2023) Intentional release of native species undermines ecological stability https://doi.org/10.1073/pnas.2218044120 資源管理の一手段として用いられる放流が、放流した地域の生態系を損なう作用があることを主張する。放流への依存度…

2023年の水産業界ニュースの備忘録

東京電力福島第一原子力発電所の処理水放出 青森県大間町のクロマグロ漁獲量未報告事件 太平洋クロマグロ漁獲枠 サンマの漁獲枠 洋上風力発電をめぐる受託収賄で衆議院議員が逮捕起訴 第4期海洋基本計画が発表 その他 東京電力福島第一原子力発電所の処理水…

データや科学的知見が少ないのなら漁獲は控え目にしなければならない

(2023年3月7日、獲り残し資源量一定方策(CES)の部分を修正) 先日ネット上で水産庁の資料(日付が書かれておらず、グラフも2011年までだから10年くらい昔のもの?) を見つけました。この中で科学的知見が足りないことを理由に漁獲可能量(TAC)を決定し…

水産データベースまとめ(2023)

水産関係のデータのリンク集です。気がついたら継ぎ足していきます。 世界 日本 用語集 世界 FAO FAO Fisheries & Aquaculture RAM Legacy https://www.ramlegacy.org/ NOAA https://www.fisheries.noaa.gov/science-and-data FishBase https://fishbase.net…

2022年の水産業界ニュースの備忘録(2023年1月22日追記)

水産流通適正化法の施行を2023年1月22日追記。 ロシア連邦によるウクライナへの軍事侵攻 焼津カツオ盗難事件 福島第一原子力発電所の処理水海洋放出 アサリ産地偽装 水産流通適正化法の施行 その他 ロシア連邦によるウクライナへの軍事侵攻 2月24日にロシア…

魚を無料配布するより対価を払って魚を食べる価値観を育てるべきである

幾つかの地方自治体のイベントで、魚の無料配布が行われています。配布される魚種は、鮭や秋刀魚などがあります。筆者はこのような行事の開催に反対します。参加者はきちんと自分でお金を払って魚を購入すべきです。魚の無料配布は漁業者団体もしくは自治体…

MSE(管理戦略評価)。記2022年8月5日(2022年8月21日修正)

(2022年8月6日、21日修正) MSE(Management Strategy Evaluation、管理戦略評価)についてのまとめ。 MSEとは MSEの基本サイクル MSE実施のコツ 日本語で書かれた参照 英語で書かれた参照 MSEとは Goethel et al. (2019) Closing the feedback loop: on st…

TAC(漁獲可能量)。 記2022年7月16日

TAC(Total Allowable Catch、漁獲可能量)は、ある漁獲対象種の指定した期間(大抵は年単位)に獲ることのできる上限量である。 http://www.jafic.or.jp/tac/index.html https://www.jfa.maff.go.jp/j/suisin/s_koukan/ などのWebページを見ると、例えば令…

水産白書令和3(2021)年度 記2022年7月10日

水産白書令和3年度が発表。 https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/R3/220603.html 特集は「新たな水産基本計画」と「 新型コロナウイルス感染症による水産業への影響と対応」だった。このうち水産基本計画は、平成14(2002)年から五年ごとに更新さ…

MEY(最大経済生産量)。記2022年2月6日

MSY(Maximum Sustainable Yield、最大持続生産量)について書いたので、 MSY(最大持続生産量)。記2021年7月29日 - 海勉 Studies of the ocean 次にMEY(Maximum Economic Yield、最大経済生産量)についてまとめてみる。 MSYは継続して収穫(漁獲)できる…

FAOのYearbook 2019を斜め読みする 記2022年2月6日

FAO(Food and Agriculture Organization of the United Nations、国際連合食糧農業機関)のYearbook https://www.fao.org/documents/card/en/c/cb7874t は世界の漁業についてのデータや情報を大まかに紹介しています。2021年公開のバージョンには2019年まで…

2021年の水産関連ニュースの備忘録

北海道 北海道紋別市毛ガニ漁船衝突事故 北海道 北海道稚内市底引き網漁船拿捕連行事件 北海道 東北海道赤潮被害 静岡県 焼津漁港カツオ窃盗事件発覚 島根県 漁業協同組合JFしまねの役員改選問題 日本全体 水産物・水産加工品の適正取引推進ガイドライン …

根拠薄弱な「資源状態」は誤解を招くから記載すべきではない。

国立研究開発法人水産研究・教育機構が毎年発行している魚種別資源評価の資源水準は、資源情報が多い一部の魚種を除いて記載を取り止めるべきです。 令和2年度資源評価結果 まずこの記事で私が取り上げている「資源状態」とは上のリンク先(2021年12月6日閲…

最近の論文(MSC)とMSCレポート 記2021年10月10日

Wakamatsu, H., Sakai, Y., (2021) Can the japanese fisheries qualify for MSC certification? https://doi.org/10.1016/j.marpol.2021.104750 日本の53 ケースの漁業のデータに対しMSC pre-assessment scores. を使って日本の漁業がどれくらいMSC 認証を…

サンマについてのレポート、条約。記2021年8月24日

国立研究開発法人 水産研究・教育機構のレポートが以下のリンクから閲覧可能。 http://kokushi.fra.go.jp/index-2.html 国際漁業資源の現況 -令和2年度現況- 要約版 と 詳細版 があるが、詳細版の表1に1995年から2019年までの北太平洋におけるサンマの国・…

最近の論文と農水省の動画。記2021年8月15日

F. Sewall et al. (2021) Growth, condition, and swimming performance of juvenile Pacific herring with winter feeding rations https://doi.org/10.1139/cjfas-2020-0293 ニシン(Pacific herring, Clupea pallasii )の稚魚の冬の死亡率について。冬季…

最近の論文。記2021年8月8日

M. Aldrin et al. (2021) Caveats with estimating natural mortality rates in stock assessment models using age aggregated catch data and abundance indices - ScienceDirect 魚の自然死亡率の推定。6つの異なる推定モデルに対し同じデータを使って有…

MSY(最大持続生産量)。記2021年7月29日

Youtubeで農林水産省の公式チャンネルhttps://www.youtube.com/user/maffchannel がMaximum Sustainable Yield(MSY、最大持続生産量)について簡潔な説明動画を公開。 youtu.be このような発信をしてくれたことは素直に良い評価をしたい。ただし5分57秒の動…

EBFMと最近の論文。記2021年7月25日

Ecosystem Based Fishery Management (EBFM)についてはPikitch et al. (2004) 10.1126/science.1098222 EBFMの目的は海洋生態系やそれに支えられる漁業を健全に維持すること。特に以下の四つが求められる。 (i)生態系の悪化を避ける (ii)生物種の集まり…

水産白書(令和2(2020)年度)記2021年7月17日

2021年6月に水産白書(令和2(2020)年度)が発表。 https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/r02_h/index.html 第一部の特集は「マーケットインの発想で水産業の成長産業化を目指す」だった。昨年令和元年度水産白書の第一部特集は「平成期の我が国水…