MSY(Maximum Sustainable Yield、最大持続生産量)について書いたので、
MSY(最大持続生産量)。記2021年7月29日 - 海勉 Studies of the ocean
次にMEY(Maximum Economic Yield、最大経済生産量)についてまとめてみる。
MSYは継続して収穫(漁獲)できる最大の量を求めたのに対し、MEYは経済的な利益が最大となるような収穫(漁獲)量を求める。
Dichmont et al. (2010) On implementing maximum economic yield in commercial fisheries
https://doi.org/10.1073/pnas.0912091107
によると、オーストラリアはAustralian Fisheries Management Act 1991(本稿では1991年オーストラリア漁業管理法、と訳す)で、MSYではなくMEYを達成することを目標とした。この論文ではオーストラリア北部のエビ漁(Northern Prawn Fishery)から得られたMEYを実践する際の課題を提示する。
課題1:Specifying the Model.(モデルを特定せよ)
… MEYを社会実装するためには、資源量、費用、価格を考慮したモデルをつくることが求められる。
課題2:Defining the Boundaries.(MEYを達成する範囲を決めよ)
… MEY は漁業における部分的な最適化だが、その達成のために漁船を減らしたり、船員を減らしたりする場合もある。すると地域産業全体としては経済的な損失になるかもしれない。
課題3:The Best Outcome May Not Be Practical.(最良の結果は実用的でないかもしれない)
…現在の資源量が経済的に最適な量を下回り、かつ利益の割引率が有限のとき、理論上は漁獲努力量を短期間減らすことが最適になる。しかしその場合、何年間か漁獲がない状態での固定費や労働者の雇用はどうなるかも考えなければならない。
課題4:The Need for Accurate Economic Data.(正確な経済データの必要性)
…漁業活動にかかる費用や漁獲物の価格は時間と共に変動していく。それらの適切な将来予測が必要になる。
課題5:A Good Target Is Not Enough.(良い目標では不十分)
…管理計画が変更されたとき、漁業者や漁船団がどう対応するかはどんなに良いモデルでも完全には表現できない。また、どんなに良い管理構造でも最適な変化を達成できるかは保証できない。
課題6:Implementation in a Comanagement Arena.(共同管理体の実装)
…漁場の共同管理において漁業者や管理者が意思決定の場に参加することが大切だが、利益最大化やMEYの概念はよく理解されていない。
これらの課題の解決が経済性の向上や環境保護に重大である、とのこと。