海勉 Studies of the ocean

国民共有の財産である海洋水産資源の管理は国民に開かれた政策の下で科学的に行われなければならない

水産白書令和3(2021)年度 記2022年7月10日

水産白書令和3年度が発表。

https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/R3/220603.html

特集は「新たな水産基本計画」と「 新型コロナウイルス感染症による水産業への影響と対応」だった。このうち水産基本計画は、平成14(2002)年から五年ごとに更新されている。

https://www.jfa.maff.go.jp/j/policy/kihon_keikaku/

によると、歴代の水産基本計画において、計画制定時から十年後の生産目標、消費目標、自給率目標が提示されているが、それらが十年後実際どうなったかをきちんと検証する必要があると感じた。

 

第一部第1章49ページの地理的表示(GI)保護制度については恥ずかしながら初めて知った。「品質や社会的評価等の特性が産地と結び付いている産品について、その名称を知的財産として保護する制度」とのことだが、信頼を担保するための技術的な仕組みの導入が望まれる。

 

第一部第2章

新たな資源管理の推進によって、令和12(2030)年度までに漁獲量を10年前、つまり平成22(2010)年と同程度(444万トン)まで回復させることを目指すとあるが、資源量の目標もあって良かったのではないか。

 

第一部第4章

146ページで「…3)北方四島の周辺12海里内での我が国漁船の操業に関する北方四島周辺水域操業枠組協定の三つの政府間協定を基本とした漁業に関する取決めが結ばれています。」とあるが、これに対し日本側から入漁料を払っている事実と金額についても言及すべきであろう。日本国の領海内で漁業をするために、当該地域を占拠している他国に金を払わされていることはもっと周知されるべきだ。

 

第一部第5章

産地の生産力強化と輸出促進による水産業の成長産業化、海洋環境の変化や災害リスクへの対応力強化による持続可能な漁業生産の確保、「海業(うみぎょう)」振興と多様な人材の活躍による漁村の魅力と所得の向上を課題として漁港漁場整備長期計画が2022年3月に閣議決定されたとあるが、この計画の下に予算が適切に投じられているかは検証を続ける必要がある。具体的には、そもそもその漁港を維持する必要があるのか、災害リスクへの対応のため堤防や避難施設をどの規模にするのか、など税金が放漫に扱われないようにする監視のチェックポイントがあると良い。

 

第一部第6章

図表6-5 水産物放射性物質モニタリング結果(167ページ)はもっと広く知られて良いと思うが、右縦軸の超過率は0から100%ではなく0から10%までの方が良いと思う。図表6-9 原発事故に伴う諸外国・地域による輸入規制の緩和・撤廃の動向(水産物)や図表6-10 我が国の水産物に対する主な海外の輸入規制の状況(令和4(2022)年3月末現在)も見る価値がある。