海勉 Studies of the ocean

国民共有の財産である海洋水産資源の管理は国民に開かれた政策の下で科学的に行われなければならない

MSE(管理戦略評価)。記2022年8月5日(2022年8月21日修正)

(2022年8月6日、21日修正)

MSE(Management Strategy Evaluation、管理戦略評価)についてのまとめ。

 

MSEとは

Goethel et al. (2019) Closing the feedback loop: on stakeholder participation in management strategy evaluation.

https://doi.org/10.1139/cjfas-2018-0162

によると、MSEとは、「系の不確実性を統合しながら、漁業、生態系、社会経済関連の目的を達成するために提案された管理方法の有効性をシミュレーションによって調べる手法」である。以下噛み砕いて説明する。

 

水産資源を管理しようとすると、まず「不確実性 uncertainty」があることが問題になる。対象の魚種は次の年どれくらい産卵するか、一年間にどれくらいの割合で死亡するか、資源量を推定したとき真の資源量とどれくらい誤差があるか、など不確実なことだらけである。その不確実性があることを大前提とする。

 

次に水産資源を管理する目的として、漁業者の生活の向上や自然生態系の保全、そして地域の雇用の維持発展などが挙げられる。複数の利害関係者がそれぞれの視点を持っていることが重要である。

 

その利害関係者の個々の目的を達成するために、幾つかの管理方法を選択肢として用意する。そしてそれらをプログラミングしてコンピュータでシミュレーションする。結果を見てどの管理方法が目的達成に適うかを検討する。この一連の流れ、枠組みがMSEである。

 

MSEの基本サイクル

具体的なMSEのサイクルは以下の文献に詳しく書かれている。

Siple et al. (2021) Considerations for management strategy evaluation for small pelagic fishes.

https://doi.org/10.1111/faf.12579

(1) 管理目的を明らかにして、それに基づく数値指標を用意する

(2) 重大な不確実性の発生源を特定する

(3) 対象の系(個体群動態など)を記述するモデルをいくつか構築する

(4) パラメータを設定する、その際パラメータの不確実性も数値化して考える

(5) 実装されうる管理戦略を特定する
(6) (5) で特定した管理戦略の候補たちをそれぞれシミュレーションする
(7) シミュレーションの結果をまとめ、解釈し、必要があれば過程を改善する

 

うまくいかなかった点があれば、また新たに(1)に戻って何度もやり直し、より良い戦略を練り上げていくことが主眼である。

 

MSE実施のコツ

前掲のGoethel et al. (2019) によると、MSEの成功、特に漁獲ルールや規制への改善や受け入れをもたらすものは、MSE を分析開発する中立的なアドバイザーに加え、

資源の利用者、

保全グループの代表者、

漁業管理を担当する機関 

を含む幅広い関係者を参加させることであるという。

 

「MSE は、不確実性のある問題についてより深く知ることを意図するのではなく、その不確実性に対する管理手順の性能の堅牢性を評価することに集中することで、不確実性に対処する」

Butterworth et al. (2010) Purported flaws in management strategy evaluation: basic problems or misinterpretations? 

https://doi.org/10.1093/icesjms/fsq009

のが大事な点である。

 

日本語で書かれた参照

日本でのMSEの適用としては、主にクロマグロの例が挙げられる。しかし他の魚種にもMSEの枠組みを設定することはもちろん可能なので、今後も実施拡大が期待される。

管理戦略評価 | The Pew Charitable Trusts

https://ichimomo.github.io/shigen_kensyu2019A/4-ichinokawa/presen_ichinokawa.pdf

https://www.pewtrusts.org/~/media/assets/2017/08/tuna_management_strategy_evaluation_for_fisheries_jp.pdf

https://www.jfa.maff.go.jp/j/press/kokusai/180507.html

 

英語で書かれた参照

以下の論文は残念ながら有料公開。ただしGoogle scholar で「Management Strategy Evaluation」と調べると、無料で読むことのできる論文も出てくる。

Punt et al. (2016) Management strategy evaluation: best practices.

https://doi.org/10.1111/faf.12104

具体的なMSEのサイクルが書かれている。前掲のSiple et al. (2021)の論文もこれを参考にしている。

 

Nakatsuka (2017) Management strategy evaluation in regional fisheries management organizations - how to promote robust fisheries management in international settings.

https://doi.org/10.1016/j.fishres.2016.11.018

「MSE は不確実性に対して頑健な管理戦略を作ることを目的とするのであり、不確実性が解決されるという仮定の下で最良の戦略を見つけることではない」との言は心に留めておきたい。

TAC(漁獲可能量)。 記2022年7月16日

TAC(Total Allowable Catch、漁獲可能量)は、ある漁獲対象種の指定した期間(大抵は年単位)に獲ることのできる上限量である。

http://www.jafic.or.jp/tac/index.html

https://www.jfa.maff.go.jp/j/suisin/s_koukan/

などのWebページを見ると、例えば令和2(2002)年のマイワシのTACは、太平洋系群が1,408キロトン、対馬暖流系群が108キロトンとわかる。

 

TACの利点としては、操業時間や操業する漁船の数を決めて資源管理をする方法よりも科学的な根拠がある。操業する時間や隻数を定めても、魚が多くいる場所で操業すれば沢山獲れるし、少ない場所ではその逆になってしまう。漁獲効率の良い漁法や漁具を使えば、時間や隻数に制限があっても魚を多く取ることは可能になる。それに対してTACの設定は予め漁獲してよい量の上限を決めることなので、資源管理には効果的である。ところが、TACを設定するだけでは意味がない。TACをABC(Allowable Biological Catch、許容可能漁獲量)を下回るように設定し実行することで適切な資源管理となる。ABCとは、それを上回る収獲(漁獲)をすると資源が崩壊するリスクが高くなる収獲(漁獲)量のこと。ただしこのABCを厳密に求めることは、資源の推定や個体数の移り変わりの不確実性があることから難しい。ABCを決める「目安」としてMSY(Maximum Sustainable Yield、最大持続漁獲量)を使用している。

MSY(最大持続生産量)。記2021年7月29日 - 海勉 Studies of the ocean

もちろんMSYもABCと同じ理由から厳密に求めることは困難である。「MSYという指標に価値があるかどうか」という議論と「TACを設定する事自体が適切かどうか」という議論は直接には関係ない。MSYは単なる指標の一つであって、TACを設定する根拠は他の指標を使うことも可能だからである。

 

TACの欠点としては、TAC設定のみでは早獲り競走になること、複数の魚種にTACがあると全ての消化が難しくなること、海上投棄を招くことなどがある。漁獲してよい上限だけが設定されていると、漁業者はその量に到達する前に自分が漁獲しようという動機がはたらく。そして漁期が始まったら多くの漁業者が同時に漁獲を始め、多くの量の魚がすぐに水揚げされる。これは供給過多になり価格形成の段階で不利になってしまう。解決策としては、TACに基づき漁獲枠を漁業者に分ける手がある。専門用語ではIQ(Individual Quota、個別割当)や割り当てられた漁獲枠を取引するITQ(Individual Transferable Quota、譲渡可能個別割当)がある。

複数の魚種にTACが設定されていると、混獲が問題になる。狙った魚を狙った量だけ獲ることができれば理想だが、現実上は難しい。ある魚Aは上限まで獲ったのでそれ以上獲ることは出来ない、だが別の魚Bはまだ漁獲量の枠に余裕がある、しかし魚Bを獲ろうとするとどうしても魚Aも獲れてしまう、という状況があるとする。その場合魚Aの混獲に目を瞑って漁獲を続けるか、魚Bの漁獲を中断して来季に漁獲枠を持ち越すか、議論が必要になる。

上の場合に関連して、魚Aが上限を超えて獲れてしまっても、海上に捨ててしまえばよいという判断もありうる。漁獲量のデータとは、事実上水揚げされた量であり、本当に漁獲した量ではないという指摘もある。ただし海上投棄した魚がそのまま元通りに生きていれば問題はないが、死んでしまったら結局資源の乱獲に等しい結果になる。漁業者による漁獲した魚の海上投棄を防ぐためには、監視員の漁船への同乗などモニタリング制度が必要になる。

 

 

水産白書令和3(2021)年度 記2022年7月10日

水産白書令和3年度が発表。

https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/R3/220603.html

特集は「新たな水産基本計画」と「 新型コロナウイルス感染症による水産業への影響と対応」だった。このうち水産基本計画は、平成14(2002)年から五年ごとに更新されている。

https://www.jfa.maff.go.jp/j/policy/kihon_keikaku/

によると、歴代の水産基本計画において、計画制定時から十年後の生産目標、消費目標、自給率目標が提示されているが、それらが十年後実際どうなったかをきちんと検証する必要があると感じた。

 

第一部第1章49ページの地理的表示(GI)保護制度については恥ずかしながら初めて知った。「品質や社会的評価等の特性が産地と結び付いている産品について、その名称を知的財産として保護する制度」とのことだが、信頼を担保するための技術的な仕組みの導入が望まれる。

 

第一部第2章

新たな資源管理の推進によって、令和12(2030)年度までに漁獲量を10年前、つまり平成22(2010)年と同程度(444万トン)まで回復させることを目指すとあるが、資源量の目標もあって良かったのではないか。

 

第一部第4章

146ページで「…3)北方四島の周辺12海里内での我が国漁船の操業に関する北方四島周辺水域操業枠組協定の三つの政府間協定を基本とした漁業に関する取決めが結ばれています。」とあるが、これに対し日本側から入漁料を払っている事実と金額についても言及すべきであろう。日本国の領海内で漁業をするために、当該地域を占拠している他国に金を払わされていることはもっと周知されるべきだ。

 

第一部第5章

産地の生産力強化と輸出促進による水産業の成長産業化、海洋環境の変化や災害リスクへの対応力強化による持続可能な漁業生産の確保、「海業(うみぎょう)」振興と多様な人材の活躍による漁村の魅力と所得の向上を課題として漁港漁場整備長期計画が2022年3月に閣議決定されたとあるが、この計画の下に予算が適切に投じられているかは検証を続ける必要がある。具体的には、そもそもその漁港を維持する必要があるのか、災害リスクへの対応のため堤防や避難施設をどの規模にするのか、など税金が放漫に扱われないようにする監視のチェックポイントがあると良い。

 

第一部第6章

図表6-5 水産物放射性物質モニタリング結果(167ページ)はもっと広く知られて良いと思うが、右縦軸の超過率は0から100%ではなく0から10%までの方が良いと思う。図表6-9 原発事故に伴う諸外国・地域による輸入規制の緩和・撤廃の動向(水産物)や図表6-10 我が国の水産物に対する主な海外の輸入規制の状況(令和4(2022)年3月末現在)も見る価値がある。

 

MEY(最大経済生産量)。記2022年2月6日

MSY(Maximum Sustainable Yield、最大持続生産量)について書いたので、

MSY(最大持続生産量)。記2021年7月29日 - 海勉 Studies of the ocean

次にMEY(Maximum Economic Yield、最大経済生産量)についてまとめてみる。

 

MSYは継続して収穫(漁獲)できる最大の量を求めたのに対し、MEYは経済的な利益が最大となるような収穫(漁獲)量を求める。

 

Dichmont et al. (2010) On implementing maximum economic yield in commercial fisheries

https://doi.org/10.1073/pnas.0912091107 

によると、オーストラリアはAustralian Fisheries Management Act 1991(本稿では1991年オーストラリア漁業管理法、と訳す)で、MSYではなくMEYを達成することを目標とした。この論文ではオーストラリア北部のエビ漁(Northern Prawn Fishery)から得られたMEYを実践する際の課題を提示する。

課題1:Specifying the Model.(モデルを特定せよ)

… MEYを社会実装するためには、資源量、費用、価格を考慮したモデルをつくることが求められる。

課題2:Defining the Boundaries.(MEYを達成する範囲を決めよ)

… MEY は漁業における部分的な最適化だが、その達成のために漁船を減らしたり、船員を減らしたりする場合もある。すると地域産業全体としては経済的な損失になるかもしれない。

課題3:The Best Outcome May Not Be Practical.(最良の結果は実用的でないかもしれない)

…現在の資源量が経済的に最適な量を下回り、かつ利益の割引率が有限のとき、理論上は漁獲努力量を短期間減らすことが最適になる。しかしその場合、何年間か漁獲がない状態での固定費や労働者の雇用はどうなるかも考えなければならない。

課題4:The Need for Accurate Economic Data.(正確な経済データの必要性)

…漁業活動にかかる費用や漁獲物の価格は時間と共に変動していく。それらの適切な将来予測が必要になる。

課題5:A Good Target Is Not Enough.(良い目標では不十分)

…管理計画が変更されたとき、漁業者や漁船団がどう対応するかはどんなに良いモデルでも完全には表現できない。また、どんなに良い管理構造でも最適な変化を達成できるかは保証できない。

課題6:Implementation in a Comanagement Arena.(共同管理体の実装)

…漁場の共同管理において漁業者や管理者が意思決定の場に参加することが大切だが、利益最大化やMEYの概念はよく理解されていない。

 

これらの課題の解決が経済性の向上や環境保護に重大である、とのこと。

 

FAOのYearbook 2019を斜め読みする 記2022年2月6日

FAO(Food and Agriculture Organization of the United Nations、国際連合食糧農業機関)のYearbook https://www.fao.org/documents/card/en/c/cb7874t は世界の漁業についてのデータや情報を大まかに紹介しています。2021年公開のバージョンには2019年までの情報がまとめられています。

 

漁獲漁業

2019年の漁獲漁業の上位国は、上から中華人民共和国(漁獲量13,995,443トン)(以下中華人民共和国の数字は香港、マカオ、台湾は含まない)、インドネシア(7,479,325トン)、インド(5,458,700トン)、ロシア連邦(4,974,162トン)、…と続き、日本は8位(3,163,760トン)でした。(9ページ)

 

最も漁獲された魚種は、アンチョビ(学名Engraulis ringens、漁獲量4,248, 852トン)、すけとうだら(Gadus chalcogrammus、3,496, 436トン)、カツオ(Katsuwonus pelamis、3,441, 831トン)、キハダマグロ(Thunnus albacares、1,578,830トン)、ニシン(Clupea harengus、1,559,021トン)、…でした。(12ページ)

 

養殖漁業

2019年の養殖漁業の上位国は、中華人民共和国(産出量48,246,255トン、産出額150,750,806 thousand USD)、インド(7,795,000トン、14,514,648 thousand USD)、インドネシア(5,950,000トン、13,062,090 thousand USD)、ベトナム(4,442,257トン、 12,039,742 thousand USD)、…と続き、日本は産出量14位(598,229トン、3,924,879 thousand USD)でした。(30ページ)

 

養殖による産出量の多い魚種は、ソウギョ(学名tenopharyngodon idellus、産出量5, 728,383トン、産出額13,121,450 thousand USD)、バナメイエビ(Penaeus vannamei、5,446,216トン、32,190,978 thousand USD)、ハクレン(Hypophthalmichthys molitrix、4,827,720トン、 10,366,532 thousand USD)、ナイルティラピア(Oreochromis niloticus、4,590 292トン、 9,179 ,877 thousand USD)、コイ(Cyprinus carpio、4,411,900トン、9,046,263 thousand USD)でした。(32ページ)

 

貿易

水産物の輸出上位国は、中華人民共和国(輸出額20,074,881 thousand USD)、ノルウェー(11,994,519 thousand USD )、ベトナム(8,611,497 thousand USD)、インド(6,846,460 thousand USD)、…と続き、日本は22位(2,219,712 thousand USD)でした。(45ページ)

 

水産物の輸入上位国はアメリカ合衆国(輸入額23,316,681 thousand USD)、中華人民共和国(17,935,553 thousand USD)、日本(15,128,022 thousand USD)、スペイン(8,073,094 thousand USD)、フランス(6,644,141 thousand USD)、…でした。(45ページ)

 

Yearbook 目次

【漁獲生産、船舶と雇用】

・概説

・漁獲の説明

[要約]

 (魚)

  ・世界の漁獲生産

  ・主要国の2019年の漁獲生産

  ・魚種ごとの2019年の漁獲生産

  ・主要魚種の2019年の漁獲生産

  ・低所得食料不足国の漁獲生産

 (海藻・その他水生植物)

  ・国や地域の採取量

 (漁業船舶)

  ・船舶の数

 (雇用)

  ・漁師の数

  ・養殖漁業者の数

  ・加工業者の数 

【養殖生産】

・概説

・さまざまな養殖と漁獲漁業者への分類

[要約]

  ・世界の内陸と海水面における養殖生産量

  ・生育環境ごとの養殖生産量

  ・主要国の2019年の養殖生産量

  ・FAO ISSCAAPによる養殖生産量

  ・主要魚種ごとの2019年の養殖生産量

  ・低所得食料不足国の漁獲生産

  ・生産者ごとの2019年の水生植物の養殖生産量

【商品商材】

・はじめに

・概説

[要約]

  ・国や地域ごとのメモ

  ・世界の漁業生産の傾向

  ・先進国の漁業生産の傾向

  ・発展途上国の漁業生産の傾向

  ・水産品商材の国際的な全貿易取引の推定

  ・水産品商材における主要な輸入国と輸出国の国際的な貿易取引

  ・FAO ISSCAAPによる水産品商材の国際的な輸出

  ・7つの水産品商材の大陸ごとまたは国や地域ごとの国際的な貿易取引量

【食料バランスシート】

・はじめに

・概説

・主要漁場のリスト

・国や地域のリスト

・漁業統計の年間レポートのリスト

 

 

 

 

2021年の水産関連ニュースの備忘録

 

北海道 北海道紋別市毛ガニ漁船衝突事故

5月26日毛ガニ漁船「第八北幸丸(ほっこうまる)」(9.7トン)と紋別港に向かっていたロシア・サハリンのネベリスク船籍の運搬船「AMUR」(662トン)が衝突し、転覆した「第八北幸丸」の乗組員5人のうち3人が死亡。

3人死亡の毛ガニ漁船衝突事故でロシア人航海士逮捕 海上保安部 | ロシア | NHKニュース

海保が転覆漁船を実況見分 事故調査官派遣も、北海道 - 産経ニュース

転覆毛ガニ漁船、右舷・船底が大きく損傷…海保が実況見分 : 社会 : ニュース : 読売新聞オンライン

漁船とロシアの貨物船が衝突、3人死亡 北海道・紋別沖:朝日新聞デジタル

知事定例記者会見(令和3年5月28日) - 総合政策部知事室広報広聴課

 

北海道 北海道稚内市底引き網漁船拿捕連行事件

5月28日北海道稚内市の底引き網漁船「第百七十二榮寶丸(えいほうまる)」がロシア連邦保安庁サハリン州国境警備局の警備艇によりサハリン州コルサコフに連行。日本側が罰金を払い6月10日に解放、同11日に稚内港に到着。

ロシアが拿捕の漁船が稚内に帰港 健康に問題なく安堵:朝日新聞デジタル

茂木外務大臣会見記録|外務省

野上農林水産大臣記者会見概要:農林水産省

吉田外務報道官会見記録|外務省

知事定例記者会見(令和3年5月28日) - 総合政策部知事室広報広聴課

知事定例記者会見(令和3年6月4日) - 総合政策部知事室広報広聴課

知事定例記者会見(令和3年6月11日) - 総合政策部知事室広報広聴課

https://www.pref.hokkaido.lg.jp/fs/2/4/0/5/8/7/4/_/030531-01rosai.pdf

 

北海道 東北海道赤潮被害

9月北海道釧路市の漁港で、カレニア・セリフォルミス(Karenia selliformis、植物プランクトンの一種)による赤潮を確認。以降日高管内から根室管内赤潮発生。

北海道の赤潮、漁獲種も変化 被害80億円「先見えない」: 日本経済新聞

https://www.hro.or.jp/list/fisheries/research/central/section/kankyou/att/NF_doto_redtide_20211018_new.pdf

海洋環境グループトピックス

 

静岡県 焼津漁港カツオ窃盗事件発覚

かつお(冷凍)」の上場水揚げ量日本一の漁港である焼津港で、焼津漁協職員と一部の水産加工会社が共謀して水揚げされたカツオを一部計量せず、倉庫に運び出していたことが発覚。10月には焼津漁協職員や水産加工会社元役員など7人が逮捕。

漁協職員がカツオを大量窃盗…「焼津港では水揚げが減る」「30年前からうわさあった」 : 社会 : ニュース : 読売新聞オンライン

焼津の冷蔵保管施設を捜索 カツオ窃盗、トラック搬入先か|あなたの静岡新聞

 

島根県 漁業協同組合JFしまねの役員改選問題

全国漁業協同組合連合会(全漁連)会長 岸宏氏が会長を務める漁業協同組合JFしまねの役員改選で、岸会長を含まない新役員案が決定。岸会長ら執行部は決議を拒否。島根県側は7月9日に業務改善命令を発出。

島根県報道発表資料

核心リポート・JFしまね 組合員の「乱」 小規模漁業者への目配り示せ 報道部・古瀬弘治 | 山陰中央新報デジタル

 

日本全体 水産物・水産加工品の適正取引推進ガイドライン

水産庁水産物及び水産加工品の適正取引の推進を目指し、適正取引推進ガイドラインを発表。

水産物及び水産加工品の取引におけるコンプライアンス強化

水産物及び水産加工品の取引における経営努力が報われ、健全な取引環境の整備の一助とすること

水産物及び水産加工品の取引に係る漁業者・漁協・事業者における競争を制限するものではなく、双方が公正な競争環境において、円滑な取引が行われること

を目的に定めている。

https://www.contactus.maff.go.jp/jfa/form/keiei/attach/pdf/tekiseitorihiki_madoguchi-2.pdf

 

日本全体 クロマグロ漁獲枠15%増

12月の中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の年次会合で2022年から30キログラム以上の大型魚の漁獲枠を21年比で15%増やすことで合意。22年の日本の大型魚の漁獲枠は732トン分増加し、5614トンになる見通し。

クロマグロ漁獲枠15%増 国際会議で正式決定: 日本経済新聞

 

 

根拠薄弱な「資源状態」は誤解を招くから記載すべきではない。

国立研究開発法人水産研究・教育機構が毎年発行している魚種別資源評価の資源水準は、資源情報が多い一部の魚種を除いて記載を取り止めるべきです。

令和2年度資源評価結果

まずこの記事で私が取り上げている「資源状態」とは上のリンク先(2021年12月6日閲覧)にある、右向きの矢印で表す「動向」と低位・中位・高位で表す「水準」のことです。これらは一見わかりやすいですが、個別の魚種レポートに記載されているその根拠が薄弱なものがあります。

 

イワシの場合は資源状態について記述があっても良いと思います。理由は資源評価の判断のために年齢別・年別漁獲尾数、資源量指数(産卵量、沖合域分布量、未成魚越冬群指数、資源量指標値)、自然死亡係数、そして漁獲努力量といったデータセットが使われているからです。

http://abchan.fra.go.jp/digests2020/details/202001.pdf

 

ところが、ニシンの場合は「資源状態は情報不足でわからない」と書くのが誠実だと思います。理由は判断のために使われるデータセットが漁獲量と種苗放流数しかないからです。

http://abchan.fra.go.jp/digests2020/details/202023.pdf

上記リンクの4ページに

「資源水準は、1975~2019年の漁獲量を平均した値を50として各年の漁獲量を指標値(資源水準値)化し、70以上を高位、30以上70未満を中位、30未満を低位とした。2019年の資源水準は、資源水準値が92.0であるため、高位と判断した(図7)。資源動向は、直近5年間 (2015~2019年)における漁獲量の推移から増加と判断した。」

とありますが、資源水準と資源動向が単に漁獲量から判断されています。これでは1975年から2018年まで漁獲量が低く、2019年に新しいニシンの捕獲法を適用したり操業時間を過去より長くすることで半ば無理矢理漁獲量を上げた場合でも、資源水準は「高位」と判断され、資源動向は「増加」と記述できてしまいます。

 

漁獲量は、それ単体では漁獲量という意味しか持ちません。操業時間やどれだけ定置網や刺し網を用意したかという漁獲努力量などの情報と組み合わせて初めて資源状態は推定できます。この「資源状態」がメディアや水産白書などで一般国民に広められると、ニシンは資源豊富なのだという印象を与えてしまいます。もちろん完璧に海の中にニシンが何尾いるかはわかりません。本当にニシンの資源量が多いから近年漁獲量が増えている可能性もあります。しかしそれでも判断するために使用するデータが漁獲量しかないのは不充分です。

 

水産研究・教育機構は、データの少ない魚種の資源水準の記載を取り止めて「資源状態は情報不足でわからない」と記述すべきです。